ご飯を食べない。
ちくわぶが、ご飯を食べない。
昨日まで出ていたフンも、今日の朝は出ていなかった。
もしかしたら、水そうのなかに体を隠す場所がないから、落ち着かないのがストレスになっているんじゃないか。
水が汚れているのも良くないのか、と思って、水も取り替えてからエサをあげてみたけど、パクつきは良くない。
じっ、とちくわぶを見ている。
その小さな顔を出したり、ほんの小さな衝撃ですぐ首を引っ込めてしまう。
少し臆病さんみたいだ。
しばらく見ていても、エサを食べないので、オイラもテレビの方に意識をやったりする。
そうしてまた水そうの中を見てみると、エサがかじられてるではないか!
お前さん、もしかすると見られるのが恥ずかしいのか!?
そうかそうか、それならオイラは君を見ないよ。
君がご飯をきちんと食べてくれるなら、オイラは水そうから離れよう。
まだまだ、距離は近くないんだなあ。
居候です。
オイラは今、ちょっと理由があり、相方の家に居候している。
タダで住まわせてもらってるのだから、相方に頭があがらない。
そんなある日。
相方が仕事から帰ってくるとまず、オイラ愛犬のごとく近寄り、相方のご機嫌を取るのだ。
そして、相方が買ってきた食料を、冷蔵庫に入れていく。
相方は、仕事から帰って買い物袋をオイラに渡すと、ユニットバスのシャワーにすぐ入る。
そこで、オイラは一つ、残してしまったものがあったらしい。
トイレにその茶色いものが残ることは誰にだってある。
ほんの5mmくらいのちょびっとしたものである。
しかし、キレイ好きの相方は、それを許さない。
「ちょっと!まだウンコついてるよ!」
当然、オイラは一度、とぼけてみる。
「あれ、まだついてた?おかしいなあ、流したはずなのになあ。すいません。」
ここで、一言謝罪を入れることは大事だと思う。
そして、キチンと洗剤とブラシにて、ニコニコしながら便器からそれをこそげおとす。
そして、買ってきたご飯を一緒に食べるのだ。
もちろん、レンジでチンをするのは、居候の役目だ。
一人じゃなく、一緒にご飯を食べるのは美味しい。
あとは、TSUTAYAで借りてきた100円のDVD を見て寝るだけ。
小さいオイラの小さい1日でした。
30代居候のオイラ、カメを飼う。
カメを飼うことにした。
なぜ、飼うことにしたのかというと、「自分に何か欠けているところがあるんじゃないか?」と思ったからだ。
命を育てる、ということをしたことがいままでにない。
自分の情操教育を30歳を過ぎて、自分でやる。
遅すぎることなど、ないのだ。
ペットショップから帰ってくるときも、なるべく早く帰ってくることを意識していた。
帰りに、名前をいろいろ考えた。
カメを飼う上で一番ポピュラーであろう、『カメキチ』、スイカが好きだから『スイカ』、コンビニのフランクフルトが目に入ったから『フランク永井』など、他にもいくつかあった食べ物などの名前から、ちくわぶという言葉に面白みを感じたので、『ちくわぶ』に決まった。
家に帰って、プラスチックケースの中に水を入れて、上からのぞき込むと、すぐ首を引っ込めてしまった。
少し臆病なカメみたいだ。
「これから20年ほど、よろしくな。ちくわぶ。」
『ちくわぶ』は、顔を引っ込めたままだった。