30代居候のオイラ、カメを飼う。
カメを飼うことにした。
なぜ、飼うことにしたのかというと、「自分に何か欠けているところがあるんじゃないか?」と思ったからだ。
命を育てる、ということをしたことがいままでにない。
自分の情操教育を30歳を過ぎて、自分でやる。
遅すぎることなど、ないのだ。
ペットショップから帰ってくるときも、なるべく早く帰ってくることを意識していた。
帰りに、名前をいろいろ考えた。
カメを飼う上で一番ポピュラーであろう、『カメキチ』、スイカが好きだから『スイカ』、コンビニのフランクフルトが目に入ったから『フランク永井』など、他にもいくつかあった食べ物などの名前から、ちくわぶという言葉に面白みを感じたので、『ちくわぶ』に決まった。
家に帰って、プラスチックケースの中に水を入れて、上からのぞき込むと、すぐ首を引っ込めてしまった。
少し臆病なカメみたいだ。
「これから20年ほど、よろしくな。ちくわぶ。」
『ちくわぶ』は、顔を引っ込めたままだった。